キンモクセイが咲くころ NO1

昔、山間部の学校に勤務していたことがあります。秋まつりには、いろいろ方からお招きをいただき、宴に参加させていただきました。

農家の庭先でした。キンモクセイのいい香りが漂っています。

「先生。珍しいもの、食べさせるから・・・。」

そう言いながら茶碗に盛られたご飯が出てきました。

「先生。蜂の子飯だ。食ったことないだろう・・・。」

ごはんを観察すると、蜂の幼虫の他、ほぼ成虫の形をしたものもあります。いっしょに行った同僚は、それを箸でつまみ、わぁーわぁーキャーキャー言っています。その方は、さらに蜂の巣の捕獲武勇伝を語られます。

実はその方は、招いたお客が『これをたべるんですか・・。』『ムリ。ムリ・・』といった反応を楽しまれるのが趣味みたいな方だと先輩から聞いていましたので、冷静にひと口。口の中でジャリと言いますが、たいがいなものは食べても平気なのでもうひと口パクリ。反応が薄い私を見て

「先生。これはどうだぁ」

と出されたのが、スズメバチの焼酎漬けでした。横で同僚は飛び上がりました。私はハチごと飲みましたがさすがにハチはのどを通らず、指でつかんで出しました。同僚は目をまん丸にして私を見ていました。その方も

「ハチは飲まれんわいな。のどにつかえるけ・・。」

「はやく言ってくださいよ。注いでもらったからハチも飲まなきゃと思っていました・・・。礼儀だと思って・・」

みんなで大笑いをしました。

キンモクセイが咲くころになると、いつもそのことを思い出します。

                      吉田園長